インタビュー企画 - 受講生に聞いてみた -

名前
Daniela DANIELI
国籍
イタリア
東大での所属
総合文化研究科
身分
外国人講師
期間
2020.10-
インタビュー言語
英語

日本の文化や人にじかに触れたい

Q

まずはじめに、なぜ日本に来ることになったかを聞かせてください。

A

イタリア政府から世界各国に派遣されるプログラムに応募しました。正直に言うと、日本は第一希望ではなかったんです。かなり競争の激しいプログラムで、オーストラリアもアメリカもロシアもだめで、結果として流れ着いたのが日本だった、というのが正直なところなのですが、でも、日本にも関心がなかったわけではありません。私は「イタリア文学」「歴史」「法律」の3つの学位を持っていて、特に歴史に強い関心があります。ローマの歴史は日本の歴史とよく似ていると思うところがあって、それが日本を選んだ動機にもなっています。

Q

では、そうやってたどり着いた日本で日本語を勉強しようと思ったのはどうしてですか。

A

日本の文化や日本に住む人たちにじかに触れたいと思ったからです。ステレオタイプでなく自分で日本を理解したいと思ったので。

Q

そうすると、日本語の学習動機は、necessityですか。curiosityですか。

A

curiosityです。今、東大での仕事のことだけで言えば、日本語はいらないし、外の人と触れることもほとんどありません。でも、自分で日本を感じるには、少しでも自分で日本語が話せたほうがいいと考えました。

日本語で声をかけてもらえるようになった

Q

ダニエラさんが日本語の勉強を始めたのは2年前ですね。日本語の勉強を始めてから、この2年間で、何か変わりましたか。

A

はい、とても。みんなが話しかけてくれるようになりました。実際には「みんな」というのは正しくないかもしれません。もちろんシャイな人もいっぱいいるし、それは世界中で同じだと思うんですが、でも、日本ですごくいい経験ができています。

Q

へえ、もっと聞かせてください。

A

私は朝、下北沢にエクササイズに行くんですけど、そこで同じようにエクササイズをしている人たちが声をかけてくれるようになりました。「おー、ダニエラ!」「あ、おはようございます!」とか、「じゃ、またね」とか。たったそれだけですけど、日本人の「温かさ」みたいなものを感じています。

言語によって大事なことのプライオリティが違う

Q

では、その日本語の学習のことですけど、ダニエラさんはこの2年間、一般コースのレベル1(初級前期)とレベル2(初級後期)を行ったり来たりしながら、学習を続けていますね。これには何か考えがあるんですか。

A

私は東大で授業をするのが主な仕事なので、その準備やら何やらで、ふだん自分で日本語を勉強する時間はありません。学生さんたちみたいに予習復習もできませんし、子どもみたいにゲーム感覚でいつの間にか学べるということもありません。だから、クラスに来てひたすら日本語を聞いて理解して、話す練習もクラスでやることがすべてなんです。それで初級だけでもすごく時間がかかっているんです。

Q

でも、ダニエラさんを見ていると、全然違う新しい言語を学習するというのは、こんなに大変なことなのかと気づかされることが多いです。

A

はい。頭の中にあるストラクチャ(構造)と全然違うものが入ってくるので、すごくパニックになります。今はやっとわかってきましたが。

Q

そういえば、教科書の会話(A:きのうのパーティどうでしたか。B:実験があったので、いかなかったんです)のBの文で、授業中にダニエラさんからすごくたくさん質問が出たというのが先生たちの間で話題になったときがありました。そのあとダニエラさんとの個別指導でもまたこの話をしたのが印象的だったんですけど、もう一回説明してくれますか。

A

はい、今ならわかるんですけど。
そのとき思ったのは、まず、この例文のスピーカーBは「パーティに行かなかったから、わからない」というように理由を説明したいところなので、「because+行かなかった」みたいに説明が始まるはずだと思うのに、その「行かなかった」が文の最後まで出てこないことに混乱しました。それから、このスピーカーの言いたいことは、時系列的には「終わらなかった」→「行かなかった」なので、前者は1つ前の時制(過去完了)にしないといけないと思うのに、どちらも同じ過去のplain formでいいのだ、ということを理解するにも時間がかかりました。ラテン系の言語だと厳密なルールがあるところですが、日本語はそこには全然こだわらないということですね。一言で言えば、言語によって大事なことのプライオリティが違うということだと思いますが、それを理解するのにはすごく時間がかかります。

Q

ダニエラさんみたいな学習者が、こういうふうに言語化をしてくれることで、私たちもすごく勉強になりますし、もっとうまく教えられるようにならなければと、先生たちの間でもよく話しているんですよ。
漢字についてもいろいろ質問してくれましたよね。

A

そうですね。「富士山」の「山(さん)」だけでも、いろいろなことを考えて混乱していました。英語だとMt Fujiなので、「ふじさん」ってなんで「さん」をつけるんだろう? 「さん」は「ダニエラさん」の「さん」なのかな? だったら、なぜ「山」という漢字を使うのかな? 「山」は「やま」と読むと習ったのにどうしてかな? などと次々に疑問がわきました。

Q

そうでしたね。そのようなダニエラさんのたくさんの質問のおかげで、初学者向けの漢字スポット講座(漢字First Step)の内容が充実したと思います。

A

今では漢字の勉強がおもしろくなって、漢字のノートを作って練習しています。

日常の場面で少しでも話せるようになりたい

Q

これからも日本語の学習を続けますか。どうなるのが目標ですか。

A

とにかく話せるようになりたいです。フォーマルな場は今後も英語を使うと思うのですが、インフォーマルなちょっとした場面で話せるようになりたいです。
日本人みんなと話せなくていいんです。日常の場面で会うまわりの人と小さいことでもちょっと話せるといいなと思います。たぶん相手もそれを望んでいると思うので。

Q

日本にはいつまでいますか。

A

あと2年の予定です。

Q

だったら中級までがんばれそうですか。

A

はい、がんばります。

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