インタビュー企画 - 受講生に聞いてみた -

名前
Santiago GARCIA GABILONDO
国籍
メキシコ
東大での所属
工学系研究科
身分
博士課程
期間
2021.4-修士課程 (コロナ禍の渡航制限のため、渡日は2022)、2023.4ー博士課程
インタビュー言語
日本語

せっかくならタイプの違う言語文化を体験したい

Q

東大に来た経緯を聞かせてください。

A

当時の自分の研究テーマの留学先としてフランスかドイツか日本の可能性があったのですが、フランスは以前1年間いたことがあったし、自分は英語、フランス語、スペイン語がわかるので、せっかくならタイプの違う言語文化を体験してみたいという気持ちがありました。ちょうど東大にいいプログラムがあったので、東大への留学を決めました。

Q

日本語の勉強は留学が決まってから始めたんですか。

A

はい、国の日本語学校で1年ぐらい勉強して、初級程度はできるつもりでした。でも、日本に来てから思ったより通じないと実感しました。
一番苦労したことと言えば、来日してから半年ぐらいたったころ、アパートを探したときです。ネットで予約したらすぐに不動産屋から電話がかかってきたんですけど、全然わからなくて「だれですか」という状態で。でも、「わからない」と言ったら、不動産屋さんが敬語を使うのをやめて、子どもに話すようにわかりやすく説明してくれたので、なんとかなりました。最後に契約書にサインするときだけ、研究室の日本人の友だちに手伝ってもらいました。今となってはいい思い出ですけど、本当に大変でした。

ジャズバーで息抜きと人間観察

Q

今はもう博士課程なんですね。どんな生活ですか。

A

週3-4日は研究室に行って、あとは自分のペースで研究しています。研究室では、先生とは英語、ほかのメンバーもほとんどが留学生なので、基本的には英語だけです。

Santiago GARCIA GABILONDO
Q

そうすると、日本語はほとんど使いませんか?

A

はい、大学ではそうですが、夜や週末、時間があるときには近所のジャズバーとか居酒屋とかに行くことがあり、そこでは日本語を使います。そこでいい友だちができました。

Q

へえ、もっと聞かせてください。

A

たまたま週末に散歩していたときに、おなかがすいて入った店が、そのジャズバーでした。そのときはマスターとお客さん1人しかいなくて、メニューが手書きの日本語で、googleでもうまく調べられなくて困っていたら、その2人が手伝ってくれました。3人でメニューを囲んでたくさん話をしているうちに、親しくなって、それからその店にときどき行くようになりました。そして、ミュージシャンとかいろんなお客さんとかとも友だちになりました。今では「とりあえずビール」って日本語っぽく注文できます。

Q

そのバーの人たちとは日本語で話してるんですか。

A

はい、お客さんはだいたい日本人なので。話題は、目の前の料理のこととか、メキシコのこととか、いろいろです。
おもしろいと思うのは、日本のバーは、お客さんが20代から60代ぐらいまで幅広いことです。メキシコではバーごとに集まる世代が分かれているのですが、日本は客層が広い、というのは興味深い発見の1つです。
実は、私の今の研究テーマが「町づくり」とか「人の流れ」とかに関係することなので、バーにどんな人が来ているかを観察することも楽しんでいます。

人への好奇心がモチベーション

Q

サンティアゴさんにとって日本語学習のモチベーションはcuriosity(好奇心)ですか。necessity(必要性)ですか。

A

curiosityです。来日直後は、もちろんコンビニとかでサバイブするために必要性を感じましたが、東大の自分の研究科の中だけだったら、たぶん必要はありません。さっきの不動産屋さんとのやりとりのような場面でも、もちろん日本語ができたほうがいいですけど、何か問題があったらだれかに手伝ってもらえばいいとも言えます。でも、いい会話をしたい、具体的な話や深い会話をしたいとなったら、やっぱり日本語ができるといいなと思います。

Q

何か具体例がありますか。

A

先日、東大の学生で前からフランスに住んでいる人が、フランスに帰ることになったので、パーティがあったんですけど、そこに来ていたのはほとんど日本人でした。外国人は私1人だったから、「ああ、日本語がもっと話せればな」と思いました。
あと、こんなこともあります。研究室におもしろくて友だちの多い人気者の日本人がいるんですけど、他の人と日本語で話しているときは本当に楽しそうなのに、私と英語で話すとそのおもしろさが減る感じがあります。その人のことをもっと知りたい、もっと関係を深めたいと思ったときに、「自分に日本語がほしい」と強く思います。

日本語でも経済や政治の雑談ができるようになりたい

Q

モチベーションがnecessityではないとはいえ、サンティアゴさんは集中コースを受講していましたね。それは何か考えがあったんですか。

A

それは、やっぱり早く上達したかったからです。

Q

今は授業以外にも日本語学習の方法はいろいろありますね。たとえば映画やドラマを見るとか。サンティアゴさんは、日本語の授業を受けることについては、何か考えがありますか。

A

私もよく映画やドラマを見ますし、そこから学ぶこともできますが、その表現を使ってふつうに会話しているだけでは間違いはわかりません。授業に出れば、実際に自分が使ってみて、正しい/間違いを確認しながら学ぶことができます。進歩したかったら教室のほうがいい。ただ、映画やドラマを見ることも楽しいから、たぶんどちらも必要なのではないかと思います。インプットの楽しみはいろいろ、アウトプットの上達のためには教室が有効、という感じかな。

Q

今後の日本語学習について、何かプランはありますか。

A

今は漢字が読めないことで限界があるので、もっと漢字を覚えたいです。スマホのカメラでスキャンするアプリとかもあるけど、それが正しいことを言っているとは限らないし、それに何より、道具を介して読むのは不便ですよね。自分でわかりたいという気持ちが強いです。話すことについても、メキシコで雑談していたときの感覚で、経済とか政治とかの話もできるようになりたいなと思います。

河口湖
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