インタビュー企画 - 受講生に聞いてみた -

名前
Chengpeng YU
国籍
中国
東大での所属
理学系研究科
身分
博士課程
期間
2021.4- 博士課程 (コロナ禍の渡航制限のため、渡日は2022)
インタビュー言語
日本語

日本語を6学期受講し続けた理由

Q

チェンペンさんは博士課程から東大に入ったんですね。日本に来る予定ははじめからあったんですか。

A

いいえ、次の研究環境を探す中で、今の指導教員に受け入れてもらえることになりました。その先生の所属が東大、日本だったという順番です。研究は全部英語でできると聞いていましたが、日本に行ってからの生活を楽しみたいと思って、インターネットのコンテンツで日本語の勉強を始めました。そのあとちょうどコロナ禍の渡航制限で入国できない中で、日本語センターの一般日本語コース(週2-3日)の受講を始めました。

「旅行に来た母と一緒に箱根で」
Q

約1年して渡日できて、それから毎学期1レベルずつアップして、3年間でついにレベル5(上級)まで来ましたね。でも実は、東大では、そんなに継続して初級から上級までコースを取り続ける学生は、かなり珍しいんですよ。何か考えがあったんですか。

A

インターネットとかアプリとかでも勉強はできますが、本当のクラスに参加すれば先生やほかの学生たちといろいろな生の会話の機会がありますね。それが一番です。毎朝30分だけ、ことばとか文法とかを勉強する時間を作っていましたが、主には日本語コースだけ。コースがペースメーカーみたいな感じでした。

「マグロの刺身・1皿」が「マグロのたたき・山ほど」に

Q

日本語学習を始めたのは「日本の生活を楽しむため」と言っていましたが、それは具体的には?

A

たとえば、休日に友だちと映画に行って、日本のアニメを日本語のまま見るとか。そのほか、日本には天ぷらとか寿司とかのおもしろいレストランがたくさんあります。予約したいと思ったとき、インターネットでできるところもあるけど、お店によっては電話しなければならないところもあるので、そのときに日本語が必要になります。

Q

何か苦労したことなど、ありますか。

A

はじめはやっぱり大変でした。2年前、初めてお店で「マグロの刺身」を「1皿」注文したときに、「マグロのたたき」が「山ほど」出てきたり。そんな小さい失敗はたくさんありました。でも、つい先日、研究で京都に行ってたんですけど、そこに来ていたフランス人の研究員が懐石料理を食べたいと言うので、私がネットでお店を探しました。そのお店もネット予約はできなかったので、私が電話で予約をしたんですが、うまくいって、無事にそのフランス人とおいしい懐石料理を食べることができました。そのときに自分で自分の成長を感じました。

「懐石料理の店で」①
「懐石料理の店で」②

英語も日本語もノンネイティブ

Q

チェンペンさんにとって日本語学習のモチベーションはcuriosity(好奇心)ですか。necessity(必要性)ですか。

A

両方です。necessityのほうは、さっき話したとおり、日本でごはんを食べて、人と交流をするには、日本語が必要という意味で。curiosityのほうは、たとえばアニメとかです。

Q

理系の研究室で、みんなが英語を使ってディスカッションして英語で論文を書く生活だと、日本語のnecessityはゼロという意見もあると思うんですけど、それについてはどう思いますか。

A

わたしはそうは思わないです。たとえばわたしのゼミでは、日本人の学生も英語でプレゼンテーションをして、ほかの人もそれに英語で質問するというスタイルなんですが、ときどき難しい質問になると、英語がわからなくて日本語になることがあります。そうなると私には意味がわからない。やっぱり日本語がわかったほうがいいと思う瞬間です。

「専門のホワイトボードの前で」
Q

でもそれは、東大の日本人の英語がもっと上手になったらいいってことでもありますか?

A

はい、もちろんそれもありますけど、でも、専門の深い話をしようとするとやっぱりとても難しいですね。コンセプトが抽象的だったりもするし。ネイティブスピーカーではないから難しいのは当然で、それは私にとっても同じです。私も英語のネイティブスピーカーではないので。だから、英語も日本語も使ってなんとか協力してもっといいコミュニケーションができるといいなというイメージです。

どこに行っても現地の言葉を学んで楽しみたい

Q

これで博士を修了して卒業ですね。この先はもう決まってるんですか。

A

いいえ、今ポスドクの申し込みを考えているところです。行先は国内でも海外でもどこでも。たとえばフランスとかドイツとかかもしれない。

Q

日本語は?

A

もちろん続けます。日本語は3年間やってきたけど、JLPT(日本語能力試験)は受けたことがないので、受けてみたいと思っています。そのためには少し準備が必要かな。

「旅行に来た父と一緒に河口湖で」
「奈良の鹿と一緒に」
Q

では、たとえばですけど、もし次の行先がフランスに決まったら、フランス語はどうしますか。フランス語はやったことがありますか。

A

いいえ、ないです。フランス語をやるかどうかは、プロジェクトの長さによると思います。もしこのプロジェクトが1年ぐらいだったら、フランス語を習う機会はないかもしれません。でも、たとえば3年だったら、ちゃんと習いたいです。

Q

その、1年と3年の違いは何ですか。

A

1年ぐらいだったら、フランス語がちょっと上手になるころにたぶんフランスを離れることになります。でも3年ぐらいいるんだったら、やっぱり知ってた方がまた楽しめそうかなって。日本語のときと同じです。

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